投資をやっていてつくづく思うことは、将棋より麻雀の世界に似ているということです。
どういうことか?
まず、第一に将棋は勝ち負けを競うゲームです。
いわゆる「勝率」を求めます。
麻雀は勝率より「総得失点差」を競うゲームです。
例えば、将棋では勝ち方に点差は発生しません。
飛車を二枚持ってるからプラス200点とか、金を2枚失ったからマイナス200点といったものは存在しません。
つまり、点差は存在しません(ゲームの途中で有利か不利かのポイント差はあったりします)。
藤井聡太君のプロとしての「勝率」は気にしますが、藤井聡太君の「総得失点ポイント」というのは存在しません。
ところが、麻雀は面白いもので、「勝率」ではなく、打点などの「得失点差」で勝負が決まります。
3回負けたとしても、たった1回で高い手で上がれば、最終的に勝てたりします。
これが「投資」の世界とよく似ています。
投資では9回勝ちを積み重ねても、リーマンショックやコロナショックなどの1回の大損失で資金を失ってしまうことがあります。
逆に、9回負けてもたった1回のテンバガー(10倍値上がり株)を当てれば、資金を大きく増やしたりできます。
勝率ではなく、総得失点差を競うゲームである点が、将棋ではなく麻雀とよく似ています。
それと、第二に将棋は完全情報のゲームであり、麻雀は不完全情報のゲームである点です。
将棋は全駒が盤上に出ています。麻雀は相手の牌、及び場の牌は基本ほとんどが隠れています。
なので、将棋の駒の動きのパターンは、もちろん人間の脳のパフォーマンスの限界によりますが、読むことが可能となります。ここが近年のコンピュータやAIの発展で、人間が将棋ではなかなか勝てなくなっている要因です。
でも、麻雀は違います。
不完全情報なので、必ずしも未来を予測することができません。様々な要素が絡んでくるからです。ここがコンピュータやAIがいくら発達しようが、麻雀の世界で機械が人間に勝つことは難しい点です。
投資も当然ながら「不完全情報」の世界です。
すべての情報が出ていて、把握することができると思ったら大間違いです。
将棋で言えば盤上に全ての駒が出ている状態ですね。
これは投資の世界ではありえません。
もし、すべてを把握できるのであれば、コロナショックやリーマンショック、東北大震災などがすべて把握できている世界ということになります。
残念ながら、そのような不確実性は誰も読むことができません。投資とはそういう世界なのです。麻雀と類似しています。
では、そのような世界で成果を出すにはどうしたらいいか?
勝率ではなく「総得失点差」を競うゲームであることを前提にして、勝負に挑むことです。
例えば、小さな勝ち負け(日々の上下動など)は気にしないこと。ロスカットによる一時的な損は気にしないことです。
最終的に長期でプラスになったり、思うような利回りが出たらOKなのです。
そして、嬉しいことは、この総得失点差を高める能力は、後天的に鍛えることが可能だという点です。
麻雀プロとして活躍している小林剛さんの著書『現代最強雀士が教える「なぜロジカルな人はメンタルが強いのか?」(小林剛著、飛鳥新社)』に、大変興味深いことが書かれています。
麻雀の世界は、比較的経験がモノを言う世界だと思います。実際、20代でトップクラスにまで上りつめる選手はあまりいません。早くても30代ぐらいから頭角を現し、40代くらいで皆に認められる存在になっていくようです。
これは、長年やっていたベテランのほうが、セオリーを使いこなしたり取捨選択できるだけの経験を蓄積できている、ということが影響しているに思います。
(引用元:『現代最強雀士が教える「なぜロジカルな人はメンタルが強いのか?」(小林剛著、飛鳥新社)』)
大変示唆に富んだ文章です。
将棋は藤井聡太君など若い棋士の活躍が目に留まります。
が、麻雀はそうではありません。若手ではなく、40代、50代などでも活躍しているプロが目立ちます。
なぜか?
将棋はどちらかというと「記憶力」や「俊敏性」が必要とされるゲームです。
麻雀は、構想力や戦略力など、物事を「総合的」に観る能力が必要とされるゲームです。
いずれも私の経験則です。ここは一概に断言することは難しく、今後の科学的研究で明らかになっていくでしょう。科学的根拠をお求めの方は自身でエビデンスなど調べることをお勧めします。
将棋は一応、40代で初段まで認定されたことがありますが、正直厳しい世界です。残念ながら、年齢と共に記憶力は弱まっていくからです。悲しい現実ですが、年々実力は落ちるばかりです。
若手の方が将棋は有利だなと認めざるを得ません。ポジティブシンキングでも乗り越えられない壁です。
なので、投資の世界で「デイトレード」など瞬発力を必要とする方法は、若手の方が向いているでしょう。
実際、若くて活躍するデイトレーダーはいますが、高年齢のデイトレーダーはあまり見かけたことがありません。
ところが、長期投資など、長い目でパースペクティブに物事を捉える能力は、年を重ね、経験を積んでいくことが有利に働きます。
実例ではウォーレンバフェットさんなどがそうでしょう。年を重ねても活躍できています。極論を言えば、年を重ねていくことが強みともいえます。大変希望が持てますね。
投資の世界に引退は関係ありません。生涯現役で楽しめるゲームといえましょう。
投資とは、勉強をし、経験を積むことが実る世界です。ミスをしても、総得失点差で勝てば良いのですから。
ということで、目指すべきは私の投資スタイルは「麻雀スタイル」です。総得失点差で勝つことを目的として日々精進しています。
これなら凡人でも努力が実りやすい世界と言えます。