経営者が自己変革したり、コーチングを受けたりする際は、夢を他人に決して言ってはいけません。現在、さまざまなクライアントにコーチングを行っています。

その際、私のやり方としては、まず、小手先や目先のことではなく、大局の視点から考えることをやっていただきます。理由は、小手先や目先のことは、実はボトルネックでないケースがほとんどだからです。

たとえば、経営者のケースの「広告の反応率が落ちたから上げたい」「社員の実力が低い」「右腕が育たない」など。この場合、実は広告や人材が問題なのではなく、扱っている商品やサービスが問題であったり、もっというと、社長が描いている夢やゴールが問題であったりします。それが巡り巡って、広告の反応率の低下や、社員の実力が伸びない結果につながったりするのです。

ですが、人は自分のことは盲点になり、近視眼的になり、本質的な問題が見えなくなりがちです。これはどんな天才でも同様に起こります。ですから、まず、最初にコーチングでやることは、「新しい夢・ゴール」の設定です。下から刻むのではなく、「上から刻む」ことをやります。その際、「人生」や「生き方」そのものを見直すことにもよくつながるのです。そうすることで、本当にやりたかったこと、したいこと、夢やゴールが見つかるからだ。

そして、夢やゴールが出てきた時に、必ず注意点もお伝えしています。それは「夢は絶対に他人に言ってはいけない」点です。よく自己啓発本などや、にわかコーチやセミナー講師等が、「夢や目標は他人に言いましょう。そうすれば、やらなきゃいけないと火がつきます。」と言ったりします。

しかし、あれは脳科学の観点から考えると、嘘です。パフォーマンスが落ちます。夢やゴールを実現する妨げになってしまうのです。なぜでしょうか?それは、人間には恒常性維持機能が備わっているからです。恒常性維持機能とは、簡単に説明すると、「現状を安定化させる機能」になります。この機能のおかげで、人類は生きながらえることができたのです。

たとえば、暑くなったら汗をかく。これは体温を一定に保つためです。実はこれは物理空間だけでなく、情報空間にも働きます。例をあげれば、テストの点数等。いい点数を取った時には、「やったー!」と思う反面、「まぐれか?」と思い、次のテストで悪い点数を取り、ちょうじりを合わせるのです。ゴルフの前半がよい時に、後半が悪くて、終わってみればだいたいいつも同じというのも同じ理屈になります。会社経営でも、だいたい、一年間を通じて、同じような年商になりやすいし、個人でも年収はだいたい安定して同じような収入層に落ち着きやすいのもそのためです。

そして、夢を他人に言ってはいけないのは、この恒常性維持機能のせいで、他人は必ずあなたの夢を止めようとするためです。よくあるサンプルとして、ダイエットをしようと思えば、「やめときなよ」と言ったり、目の前でおいしそうに食事をしたりするケースなどです。禁煙しようと思えば、喫煙仲間はおいしそうにあなたの目の前でたばこをふかしたりします。サラリーマンが起業しようと上司や同僚に話したなら、「危険だよ」「失敗しやすいよ」と、ありがたくアドバイスしてくれるのです。

これは何も悪気があって言ってるのではなく、本能が安定化を保つために、あらゆるクリエイティビティを発揮してしまいます。それを知らずに夢を話したあなたが悪いのです。そうこう反対されるうちに、なんだか夢を話す方もモチベーションが落ちてしまいます。あえなく、元の世界に戻るわけです。

「いやいや、止められた方がやる気が出る!言った以上、やり遂げて見返してやるんだ!」という変わった人もいます。が、この場合、気をつけなければいけないのは、「義務感」になってしまう可能性がある点です。義務感で動くと、人はパフォーマンスが落ちます。

そんな中、幸運にも強い意志力で実現する人もいますが、この場合、さらにやっかいなのは、「燃え尽き症候群」という精神不安定な状態になったり、達成した後に「虚無感」に襲われることがあるから注意が必要です。それならまだ実現しない方がよいかもしれない。ということで、夢を他人に話すことは百害あって一利なしなので、止めた方が身のためです。

ただし、言っていい場合もあります。それは脳科学や心理学をしっかりと学んだ正しいコーチングを行うコーチの場合です。その場合は言っても止められることはないから大丈夫になります。しかし、そのようなしっかりしたコーチが少ないのが難点です。

それと、ある程度走り出し、夢を実現しつつあり、もう誰も止められない!という状態になったら話しても可能。その場合は、逆に止める方が難しいから大丈夫です。